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日常だったりネタだったり作品の進捗だったり……色々書きます。不定期に。
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    諦めないという義務

    こんばんは若槻です。兄が体調不良~と昨日書きましたが
    どうやらインフルエンザだったらしいですΣ(゜д゜;){この時期に!?
    B型と言われましたが依然健康な若槻は他との違いが
    分かりません。ちょっと後でググって来ます。

    熱が9度越えたらしく随分しんどそうです。
    早めに治ればいいのですが……。

    (;・ω・){そういえば家族にインフルエンザが出たら~とかって注意を
          会社から受けた気がするけどなんだったっけ……


    それはさておき久しぶりに謝の過去話更新です。
    今回は謝は出てませんがミルトン家の方が数人出てます
    では読んでくださる方は続きからどうぞノ

    拍手[1回]





    =======================================


     住民たちの昼の波が収まった頃、昼食をとるために私は重い足を引きずり
    食堂へと向かった。食事のひとつ抜いて悩んだらどうかとも言われそうだが、
    空腹は誤魔化しようがない。

    「ベティーナおばさぁん、今日のおススメなぁにぃ?」

     ――――とは言ってもすぐに元気を取り戻すこともできずに
    力の抜け切った声で厨房にいる巨体の中年女性に声をかけた。

     彼女はベティーナ・ミルトン。家族とともにこの宮で働いてくれており、
    夫と子供が7人の9人家族である。

     仕事中は必ず白い割烹着を着て茶色の髪を全て白い三角巾で隠すという
    徹底振りを見せるプロ根性の据わった人だ。

     ベティーナおばさんはこちらを向くと眉をしかめて笑った。

    「なんだいマスター、ヒドイ顔だねぇ。またあの子にあしらわれたのかい?」


    SyeiKako3.jpg





















     ベティーナおばさんは宮の住民全ての胃袋を握っているも同然なので、
    ここに住む者すべてを把握していると言っていい。さらにあの子は食堂にも
    手伝いをしに来るので、もしかしたら私以上にベティーナおばさんの方が
    あの子のことを分かっているかもしれない。

    「……あしらわれた」

     指摘を受けてあからさまに落ち込むと、おばさんは軽く笑いながらどんぶりに
    ご飯を盛り始める。どうやら今日のおススメは丼物のようだ。

    「そうかい。……あの子はいい子なんだけどねぇ。どっか頑なだよ。
    甘えることを怖がってるようさ」

     そう言って少し寂しそうな顔をするベティーナおばさん。私はそれをカウンターに
    顔をつけたまま見上げる。7人も子供がいる彼女だ。きっと私が見える以上のものが
    映っているのだろう。

    「どうすればいいかな。歩み寄りたいのにやり方が分かんない」
    「そうさねぇ。すぐにっていうのはちょっと無理だと思うよ」

     遠慮ない真実に「やっぱり?」と力ない笑みを浮かべて頭をこてんと横に倒す。
    本当は分かっているんだ、そんなこと。
    子供といっても一人の人で、まして私では想像するしかない生き方をしてきた子が、
    そんな簡単に心を開いてくれるなんて有り得ないだろう。

     それでもどうにかしたいと思うのは、むしろ私の甘えだ。

    「でも、投げ出しちゃ駄目よマスター」

     目の前にお盆が置かれる。載っているのはほかほかと湯気を立てている
    牛丼だった。少なめの肉とたくさんの汁は嫌がらせではなくて私の好み。

     私はのろのろと視線を上げてベティーナおばさんを視界に映す。
    おばさんは力強い笑みを浮かべていた。

    「今マスターがやるべきことはしっかり食べて元気出して、またあの子に
    声をかけることだよ。諦めないで、声をかけ続けるんだ。『ちゃんと見ているよ』って
    子供に伝えるのが親の務め。頑張りな。疲れたらいつでも愚痴を聞いてあげるからね」

     母は強し。いつもベティーナおばさんを見ると思うことを改めて思う。
    そして、言葉の正しさに深く頷いた。その通りだろう。ここで諦めて
    遠ざかってしまったら、それこそあの子は私に二度と心を開いてくれない気がする。

    『身近な大人に相手にされない』

     子供にとってこれ以上の恐怖と悲しみはない。
    ましてあの子達はすでに本来一番愛をくれるはずの、
    与えなくてはいけない者たちからそれを放棄されているのだ。
    私までそれをしてはいけない。決して、だ。

    「――――うん。ありがとおばさん。頑張る」

     私は深く頷いてから体を起こしてお盆を手にした。

    「さ、じゃあまずはご飯済ませてあのぐうたら時計番を叱ってくるか」

     折角話をしていたのを邪魔された恨み――――もとい、仕事をしっかりこなさない
    ことへの罰はしっかり与えなくては。そう気合を入れると、ベティーナおばさんが
    思い出したような顔をする。

    「ああそれなら――――」
    『ぎゃーーっ』

     おばさんの言葉尻に被って悲鳴が響いた。食堂だけではなくて
    宮内中すべてに、だ。この悲鳴は放送から流れている。
    私は思わずスピーカーに目を向けた。
    悲鳴の主は今まさに話題に出していた時計塔の番人で、暴れている拍子に
    放送のスイッチがオンになったのか、バタバタと騒がしい音が続けて聞こえてくる。

    『ちょちょちょっ、チャールズ君落ち着こう! 話せば分かる――――!!』
    『チャーリーだ! いい加減覚えろ! それとチャイムの時間もしっかりやれ!!
    いつもいつもいつもいつもいつも適当に鳴らして、どういうつもりだ!? 第一
    この小汚い執務室は何だ!? ここは仕事場であってお前の部屋ではないんだぞ』
    『だって部屋に戻るの面倒なんだよー』
    『軟弱な! ええい、今日こそ叩きなおしてやる! 止まれ!!』
    『いぃーやぁーだぁぁぁ! 君のお説教長いんだもんんんん』

     そこでまたぶつりと放送が切れる。一気にしんとなった食堂で私はスピーカーを
    見つめたまま呟いた。

    「……お宅の三男坊元気だね」

     あの子と同い年ぐらいだというのにこの真逆さ。とりあえずお仕置きは
    ミルトン家の三男・チャーリーに任せることにして、私は食事を取ることにした。
    いい加減、腹の虫も騒ぎ出している。



     

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